本研究は薬物代謝経路の新規な無侵襲追跡法の確立を目的とする。薬物消長の追跡に留まらず、NMRの特徴を活かして定常状態での反応を捉える方法を確立する。これは通常の医薬品のみならず、NMR測定可能な核でラベルした試薬による機能診断にも応用できるが、定常状態測定によりNMR法の感度の低さ=時問分解能の低さを補うものである。 本研究では体内の低濃度物質の反応を対象とするため、測定感度向上が重要である。その対応の1点目として高磁場(9.4T)の装置を用いた。第2点目は最高の検出感度が期待できるサーフェスコイルによる検出を行った。ここで、NMR情報への空間情報付加に備え、磁場勾配の印可とRFパルスの正確さを確保する目的でボディコイル発信、サーフェスコイル受信の形式を採用する。本年度購入物品であるデチューニングサ-キットはこれら2つのコイル間のカップリングを外す為のものである。 速い交換反応の存在下ではT_2短縮がおきるためにエコーを用いた画像取得は不利と考えられる。モデルとして高pHの5-FU系化合物のファントムならびにFU投与マウスを用いて各種化学シフト画像シーケンスの比較検討を行った。高磁場で小動物を対象とした場合にも信号強度の信頼性の点では通常の高速撮像法よりもいわゆるCSI法が有利であることが示唆された。現在、磁化移動の直接測定を行っている。 以上の成果は1997年9月の第36回NMR討論会で発表した。
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