本研究は薬物代謝経路の新規な無侵襲追跡法として、薬物消長の追跡に留まらず、NMRの特徴を活かして定常状態での反応経路追跡法を確立する。本法は通常の医薬品に限らず、NMR測定可能な核でラベルした試薬による機能診断にも応用できるが、定常状態測定によりNMR法の感度の低さ=時間分解能の低さを補う点に特徴がある。 1. このような研究では体内の低濃度物質の反応を対象とするため、測定感度向上が重要である。その対応として高磁場(9.4T)の装置を用いた。高磁場測定の問題は磁化率の不均一に基づく画像強度の乱れであるが、その影響の定量的評価を行った。結果としてT_2評価を併用した高速スピン-エコー法の場合、T_2が30msより長い場合には満足すべき定量結果が得られた。この成果をフッ素標識糖に応用し、1999年1月の国際超高速MRIシンポジウム(日本磁気共鳴医学会主催)で公表した。 2. 速い交換反応の存在下ではT_2短縮がおきるためにエコーを用いた画像取得は不利と考えられ、通常の高速撮像法よりもいわゆるCSI法が有利であると考えた。その結果、抗がん剤、5-FUでは交換が早い腸内での信号検出に成功した。この成果は1998年9月の第26回日本磁気共鳴医学会(京都)で発表した。 3. ^<31>P-CSI法により高エネルギーリン酸化合物間の磁化移動直接測定を行った。定常状態飽和移動法によるクレアチンキナーゼの評価を空間分解能5mm^2で行った。得られた満足すべき結果を1998年10月の第37回NMR討論会(横浜)で発表した。
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