研究概要 |
脳内におけるストレス応答は一過性なものと考えられていたが、最近海馬のストレス後の萎縮が報告されるなど、解剖学的な変化が想定されている。われわれは、この、ストレス後の萎縮にアポトーシスが関与しているか検討するために以下の検討を行った。 1) まず、アポトーシスに典型的といわれている、DNAの断片化がストレス後に認められるか検討を行った。しかし、海馬、視床下部といったストレスに影響を受けやすい部位でも、明らかな断片化(ラダー形成)は認められなかった(平成9年度に引き続き行った検討)。 2) 次に、アポトーシスの検出に更に鋭敏と考えられるTUNEL法を用いた、組織化学染色を行ってアポトーシス細胞の検出を試みた。TUNEL法では、海馬にアポトーシスを起こしている細胞が染められ、それは他の部位より多く認められた。現在、ストレス負荷群に対しても同様の検討を行っている。 3) アポトーシス細胞の検出と共に、アポトーシスの制御因子の検討を行った。今回は神経成長因子より活性化され、アポトーシスを細胞内で抑制することが培養細胞系で報告されているプロテインキナーゼB/Aktが、生体内でどのように発現しているかを検討した。ラット脳内での検討では視床下部、海馬(CA1、CA2,CA3,歯状回)、大脳皮質の一部などで活性が確認された。この結果の一部関しては、他の結果とあわせて第21回生物学的精神医学会で報告する。
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