音韻意味認知テストバッテリ-の開発のために、予備テストの作成と健常高齢者への施行による信頼性検定を行い、痴呆患者への施行による妥当性検定を行った。(1)漢字サンプルの抽出:漢字の難易度(漢字検定試験の分類に従う)に応じて、漢字のみよりなる2字熟語サンプルを抽出し、それらを同音異義語を持つグループとそれ以外とに分類した。漢字選択については漢字検定試験、文部省の教育指導要領、NHK国語研究所資料等を参考とした。(2)音韻・意味テストバッテリ-(予備の版)の作成:上記漢字サンプルを用いて、a.音韻的認知 b.文脈中の意味の認知の検査のために、文例提示による同音異義語との用法区別(例:「教会に行く」と「境界に行く」)および同音語によらない文脈の適切さの区別(例:「布団を干す」と「布団を走る」)に基づき、用例を集積して予備テストバッテリ-を作成した。(3)第1相予備研究:上記予備テストを健常高齢者(60歳以上)143名に試行し、回答の偏りのある項目の補正、削除を行うとともに、Crohnbachのa係数を用いて内的信頼性の検定を行いテストバッテリ-の標準化を行った。(4)第2相予備研究:音韻・意味テストバッテリ-(標準版)の妥当性検定を行った。対象はRavenの色彩マトリックステストによる軽度もしくは中等度の痴呆高齢者28名とした。この段階では診断名は問わず、痴呆の重症度のみによって対象を選択した。同時にmini-mental scale、三宅式記銘力検査を施行し、音韻・意味テストバッテリ-とのあいだの基準連関妥当性を検定した。現在、さらに項目の選択を行い、テストバッテリ-の最終版を作成中である。
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