対象患者:DSM-4によるアルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆患者のうち、Ravenの色彩マトリックステストによる重症度評価によって軽度もしくは中度とされた者を各群ともに20-30名選択した。選択方法は、申請者の属する国立精神神経センターおよびその協力機関に、上記病名で入院となった患者を順に無作為登録し、登録に当たっては書面によるinformed consentの手続きをとり、拒絶例については登録しなかった。 測定:対象患者に対して音韻意味認知テストバッテリーによって音韻と意味認知の機能的乖離を探索し、mini-maetal scale.Dementia Rating Scaleによる痴呆症状の評価、脳波測定、三宅式記銘力検査を行った。音韻・意味テストバッテリーおよび各種心理テストについては心理士2名に委嘱し、申請者との間で対象患者10名について信頼性検定をあらかじめ行い、ICCで各項目につき0.8以上を得た。心理テストの施行にあたっては施行者には診断を知らせなかった(blind base)。 結果:解析:音韻意味認知テストバッテリーの結果の因子分析(Varimax回転)により、漢字の音韻認知と文脈上の意味認知の両機能が分離され、これらの機能の独立性が確認された。ただしクラスター分析の結果からは、両機能のそれぞれの障害の程度による患者群の分離は不良であり、実際の患者類型には他の要因が大きく関与することが示唆された。上記の両機能の障害と、他の痴呆症状、脳波(徐波、α派の出現頻度等)、テスト所見結果との相関については、それぞれが全般的知能との相関、病前知能(教育歴より推計)との相関を有したが、各知能検査の下位尺度との間には有意な相関を見いだし得なかった。
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