研究概要 |
1.分泌は準備状態を作る「プライミング」と実際の放出の「トリガリング」段階に分けられ、プライミングは放出に不可欠であるが、その実体は現在盛んに研究されているが未だ不明である。最近ホスファチジルイノシトールのリン酸化とする説が有力になりつつある。我々はインスリン産生細胞株MIN6を用いインスリン顆粒の開口放出において、プライミング段階が重要であることを示した。プライミングの実体を明らかにするためこの機能を担うと予想されるがまだ単離されていなかったプライミング因子ホスファチジルイノシトール5キナーゼ(PIP5K)のcDNAをクローニングした。PIP5Kには少なくとも2種類のアイソフォームがありα,βと名ずけた。 2.分泌に細胞骨格の変化が重要であるのでプライミングの機構を解析するための一つとして細胞骨格への作用を検討した。コントロールでは内因性のPIP5K蛋白の発現は非常に低く、細胞骨格は典型的なストレスファイバーが観察されたが、PI4P5Kを細胞に過剰発現させると著しいアクチンの重合が引き起こされた。C端を約3分の1欠失したPIP5Kではアクチン重合活性が失われた。 3.細菌毒素ストレプトリジン-Oを用いてPIP5K高発現インスリンが分泌細胞株MIN6の細胞膜を透過性にし、細胞内液をカルシウムフリー溶液で置換することによりトリガリング直前の状態にとどめ、引き続き高カルシウム溶液への移行によるインスリンの分泌を測定する系を用い、グルコース代謝やPIP5Kがプライミングの過程にどう作用しているか検討している。
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