研究概要 |
研究課題:成長ホルモンの成長作用発現の分子メカニズムの解析-ドミナントネガティブSTAT分子を用いた解析- (1)まず、成長ホルモン(GH)刺激に応答してIGF-Iを分泌しつつ成熟脂肪細胞へと分化する、マウス脂肪前駆細胞ob1771細胞株をもちいてIGF-I遺伝子プロモーターのGH応答性について検討を加えた。ヒトIGF-I遺伝子をクローニングしたのち、種々の長さの5'flanking regionを含むluciferase constructを作製し、ob1771細胞に安定導入してstable transformantを得た。これらの細胞をGHで刺激し、luciferase assayにてGH応答性のIGF-I遺伝子プロモーターの活性化を検討したが、応答性は検出できなかった。現在この原因について検討を行なっている。 (2)ob1771細胞の類縁のマウス脂肪前駆細胞株である、3T3L1細胞は増殖メディウム(DMEM,10%CS)から分化メディウム(DMEM,10%FCS+IBMX+Dexamethazone+Insulin)に移すと、3〜4日で成熟脂肪細胞へと分化することが知られている。この細胞株には検討により、STAT1,STAT3およびSTAT5が発現していること、また増殖メディウムから分化メディウムへと移すと、15minというきわめて短時間のうちにSTAT5のみが活性化され(tyrosinephosphorylation)、この活性化は24時間以上持続することを見い出した。このSTAT5の活性化は詳細な検討により、分化メディウム中のFCSに依存しておることも明らかにした。STAT5活性化に関与する、FCS中に存在し、CS(Calf Serum)中には存在しない活性としてGHがその候補として考えられたが、実際、3T3L1細胞をCH刺激すると、分化メディウムでみられたのと同じ時間経過でSTAT5の活性化が観察された。3T3L1細胞の脂肪細胞分化における、STAT5活性化の生理的意義を検討する目的で、現在ドミナントネガティブSTAT5分子を3T3L1細胞に安定導入し、脂肪細胞分化に与える影響を解析しようと試みている。
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