ヒトの骨髄間質細胞の機能を解明するために、ヒト骨髄間質細胞をSV40でトランスフォームして細胞株を確立し(SC-4)、これをBALB/Cマウスに免疫して間質細胞上の抗原に対するモノクロナール抗体(Y-72)を作製した。Y-72は、免疫原であるSC5-4のほか、ヒト骨髄間質細胞に反応したが、血球細胞には反応しなかった。そこで、今回、この抗体を用いて、認識する抗原の構造と機能の解析を試みた。まず、免疫ブロッティング法ではY-72は分子量43kDのバンドを示した。この結果を確認しアンフィニティクロマトグラフィにて蛋白を精製する目的で免疫沈降法を試みているが、まだ至適条件が得られていない。次に、骨髄生検標本の免疫組織化学により、各種血液疾患におけるY-72の発現を正常骨髄と比較して検討した。Y-72陽性骨髄間質細胞は、急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病などの造血器悪性疾患の骨髄(血球細胞は過形成)においても正常骨髄と同様の密度で同様の分布を示した。慢性骨髄性白血病でも同様の結果であった。それに対して、再生不良貧血の骨髄ではY-72陽性細胞は減少していた。再生不良貧血では、血球細胞のみならず骨髄間質細胞も減少している可能性が示唆された。今後は、Y-72のin vitro assay(骨髄間質細胞依存性コロニー形成能など)における機能を調べ、さらに認識する抗原分子の同定を試みる予定である。
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