我々はヒト白血病に関る未知の癌遺伝子をfunctional assayにて単離することを目的に、研究を開始した。まず、急性骨髄性白血病患者由来で第7染色体が片方欠落した(Monosomy 7)核型をもつ新規細胞株(中畑龍俊研究室で樹立)よりmRNAを抽出、レトロウイルスcDNA発現ライブラリーを作製し、IL-3依存性細胞株Ba/F3に遺伝子導入し、Monosomy 7の未知の責任遺伝子の単離を試みだが、現在までのところIL-3非依存性に増殖するcloneは得られていない。既知の癌遺伝子の関った核型異常のない他の細胞株に関しても、現在検討中である。一方、我々は、PCR directed random mutagenesisとレトロウイルス発現システムを組合せて、マウスにおける転写因子STAT5の恒常的活性型をBa/F3細胞株を用いて同定した。最近、ある種のヒト白血病はTEL-JAK2キメラ遺伝子形成によるJAK2の活性化が原因であることが報告されたが、種々のヒト白血病患者細胞におけるSTAT3、5の恒常的活性化は周知の事実である。したがって、STAT5のリン酸化が亢進している患者サイプルを解析し、その原因がSTAT5そのものの構造異常によるものなのか、STAT5より上流のシグナルが持続的にonの状態になっているためなのかを明らかにする目的で、患者細胞由来STAT5遺伝子をレトロウイルスを用いてBa/F3細胞において発現させ、IL-3非依存性cloneが得られるか否か、現在検討中である。
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