乳癌の新しい非侵襲的診断法として乳頭にセルロース膜を付着し、このセルロース膜に付着した非顕性の分泌液を免疫組織学的方法を用いて診断する方法を開発した。具体的にはセルロース膜を12時間〜24時間乳頭に貼付し、これを剥がした後でcarcinoembryonic antigen(CEA)に対する抗体を用いて免疫組織化学的方法を用いて判定するものである。本法を用いてまず健常人において月経周期の影響を調べてみた。これは乳頭分泌にホルモンの影響が考えられるためである。その結果、CEAに関しては健常人(乳腺疾患を持たないと判断された人)では性周期にかかわらずCEAはほとんど検出されない事が明らかとなった、また閉経後の健常人でもCEAは検出されなかった。一方、乳癌患者では多くの症例で患側により強いCEAの反応を認めた。具体的には抗CEAモノクローナル抗体およびペルオキシダーゼ呈色反応による反応生成物を、別に求めた標準希釈曲線に基づいて定量する方法で実測値を測定した。その結果乳癌のある側の乳頭からはCEAが大量に(5〜30単位、平均16.4±8.6)分泌されている反面、反対側の乳癌のない側の乳頭からは0〜9単位、平均2.1±2.1とほとんど分泌されていないことが明らかとなった。本法は全く無侵襲で貼付するだけの簡単な検査であることより乳癌のスクリーニングとしての位置づけが期待できる。しかし乳腺症に対する判定などについては今後更なる研究を要する。
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