研究概要 |
現在、胃癌に先行して、大腸癌の臨床検体を用いた研究を継続中である。 大腸癌新鮮手術切除検体25例の癌部、非癌部のゲノムDNAを抽出し、RLGS法を用いて、各々のprofileを作成した。(板野、斎藤) 二次元電気泳動により得られた各profile上でのスポットの変化を、癌部と非癌部間で比較したところ、いくつかの共通スポット変化をみとめた。その内訳は、非癌部のみに出現するスポットが4種、癌部のみに出現するスポットが2種であった。 最も高頻度にみられたスポット変化は癌部のみに出現するスポットで、25例中19例(76%)にみとめた。そのDNA断片をゲルからクローニングするために、制限醇素Not I siteのみを描出するtrapper methodを用いた。 クローニングはtrapper施行後のprofileから、目的とするスポットを直接打抜き、DNAを抽出した。DNA量の確保のため、プラスミドに押入し、大腸菌を用いて形質転換を行い、増幅させた。さらにダイデオキシ法にて、塩基配列を決定した。今回のクローニングで得られたDNA断片の塩基配列は、ヒト脂肪酸合成酵素遺伝子(FAS)と69%の相同性を認めるものであった。(板野) 今後は,得られたDNA断片をprobeとし、該当する癌関連遺伝子の同定を試みる予定である。 以上の手法にて、他の変化スポットも1種ずつクローニングしてゆくことで、未知の癌関連遺伝子同定が進んでゆくと考える。 また、各profile間のスポット変化と臨床病理学的特徴を解析することで、特定の遺伝子変化に対応した病態が解明される可能性がある。
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