現行の静脈栄養に関する栄養素の投与量がはたして適切か否かに関して再検討した。前年度、20%熱傷モデルで検討したところ、20%熱傷においては投与熱量による差異は認められなかった。今年度はより熱量消費の多い感染症モデルによる検討を行った。 1) 200g前後の雄性Wistar系ラットの頸静脈にカテーテルを挿入してTPNをおこなった。TPN中、ラットはetabolic cage内にて水分は自由摂取とし、swivelにて自由行動とした。TPN組成はブドウ糖167(g/l)、アミノ酸33(g/l)、TG670(g/l)、PL4.0(g/l)、GL7.5(g/l)、N5.5(g/l)、総熱量5.4(Mcal/l)、5.4(MJ/l)とし、投与量(kg BW/日)はA詳熱量1.4(MJ)、1.02(nonprotein MJ)、Nl.4(gN)、B群熱量1.7(MJ)、1.47(nonprotein MJ)、1.7(gN)とした。 2) IPN開始3日後、ネンブタール麻酔下にラット尾静脈より連日LPS(E.Coli 055:B5 Difco)0.01mg/kgを3日間投与し、以下の検索を行った。 3) 感染症によりA群での安静時エネルギー消費量(REE:J/時間/g)は正常時22±1.1から感染症1日目31±1.7に、B群で33.3±2.3に増加した。3日目にはA群で34±2.1、B群で35.6±1.8と増加した。REEは感染症に伴い両群とも最高で約25%増加したが、両群間に差異を認めなかった。 4) 総窒素(mgN)排泄量はA群で感染症前222±36.7から感染症3日後304±28.4と増加し、B群で熱傷前238±33.7から熱傷後331±41.1に増加したが、両群間に有意差を認めなかった。 5) NEFAはA群で0.67±0.07mEq/l、B群で0.71±0.03mEq/lであり、TriglycerideはA群で0.51±0.09mEq/l、B群で1.09±0.12mEq/lであった。 6) 以上より、従来提唱されていた投与熱量は過剰であると思われる。
|