研究課題/領域番号 |
09877256
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
谷田 達男 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (20217144)
|
研究分担者 |
藤村 重文 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (40006078)
小野 貞文 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (80250827)
|
キーワード | 血管内皮細胞 / 肺胞上皮細胞 / 移植 / 慢性肺気腫 / プロテインキナーゼC / 細胞内信号伝達系 |
研究概要 |
昨年度から今年度にかけて、肺に対して種々の環境ストレスをかけ、これに対する細胞系の反応を検討した。肺に対するストレスとして、好中球に機械的刺激を与え、細胞表面に糖タンパクからなる接着分子を表出させ、血管内皮細胞に接着させることで血管内皮細胞の反応性変化を計測した。活性化した好中球を摘出潅流肺に注入すると好中球が肺血管内皮細胞に接着し肺微小血管の蛋白に対する透過性が上昇した。更にこの現象に関して細胞内情報伝達系の関与も検討した。上記の現象が生じている際に、プロテインキナーゼC(PKC)の阻害剤を血管内皮細胞にのみ作用させ、肺微小血管透過性の亢進を抑制したことを確認できた。また、PKCを直接活性化する薬剤(PMA)を投与することによって、好中球の関与なしに血管透過性亢進を確認できた。これらのことは肺血管内皮細胞自身が好中球の接着によって細胞内信号伝達系を活性化させ、細胞の変形をもたらし、肺微小血管の透過性を変化させたことを示している。同時に、PKCに至る様々な信号伝達系の系統が活性化していることを示唆している。 以上から、好中球が活性化し、細胞表面に表出した糖たんぱくを介して肺血管内皮細胞の免疫グロブリンスーパーファミリーと呼ばれるリガンドに付着し以下の反応をひき起こすことが推測された。すなわち、細胞内にあるリガンドのC末端近傍に非レセプタータイプチロシンキナーゼが集合し、さらにはフォスフォリパーゼCが活性化され、ジアシルグリセロールと呼ばれるセカンドメッセンジャーが生成され、最終的にPKCを活性化したと考えられた。このことは同時に、MAPキナーゼと呼ばれる一連の細胞分化をひき起こす酵素群が活性化されることを示している。 このことから様々なストレスによる肺の細胞に対する刺激が移植した肺血管内皮細胞および肺胞上皮細胞を活性化し、その分裂、分化を促進する可能性を示した。
|