本年度は、松果体実質性腫瘍に於けるhydroxyindole-O-methyltransferase(HIOMT)の発現の有無を、8症例に於いて、in situ hybridization法により検索した。その結果、ほとんど全ての症例に於いてHIOMT mRNAの発現が認められた。この事は、今回の研究で開発中である抗ヒトHIOMT抗体の腫瘍マーカーとしての有用性が大いに期待できる事を示唆していると考えられた。さらに、ヒト網膜芽細胞腫細胞株であるY79cellsより抽出したtotal RNAからcDNAを合成・精製し、このHIOMT cDNAを発現ベクターに導入し、glutathione-S-transferase/HIOMT融合蛋白を作製した。現在、この融合蛋白を精製中である。 次年度では、十分に精製されたHIOMTを抗原としてモノクローナルならびにポリクローナル抗体を作製し、enzyme linked immunosolbent assay(ELISA)法による測定系を確立した上で、実際の松果体実質性腫瘍患者の血清・髄液中のHIOMT濃度を測定し、健常人ならびに松果体実質性腫瘍以外の脳腫瘍患者に於ける濃度と比較しつつHIOMT蛋白測定の有用性を検討してゆく予定である。
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