我々は、従来の光フィードバック法の技法を改良して眼前に限らない部位から、あるいは両眼を完全に遮光もしくは開眼状態で反復閃光刺激を与えるα波パルス光同調法を考案し、これまでに健常者数十名を対象として種々の免疫パラメーターへの影響を検討してきた。その結果、本法には選択的なNK活性を介する免疫監視能の上昇作用があることが判明した。一方、我々のこれまでの基礎研究成果から脳内にはNK細胞を介する免疫監視機構が欠如していることが明らかにされている。 本研究では、我々が独自に考案したNK活性を介する免疫監視能を賦活化する光フィードバック法をα波パルス光同調免疫療法として命名し、免疫能の低下した難治性脳腫瘍患者の治療に臨床応用し、その治療効果を検討中である。本治療法の最大の特長は、非侵襲的かつ簡便であることである。装置(研究試作品)は日常生活で使用可能であり、また時と場合と行動を問わず免疫療法として応用できることが特色である。本法は被験者本人のα波をリアルタイムで賦活化させる技法を活用していることから考え合わせると、腫瘍性疾患を有する患者に用いた場合には、非侵襲的、普遍的かつ持続的な免疫監視能の賦活化をはかる治療法として臨床的意義があるものと思われる。また、腫瘍再発の防止にも少なからぬ貢献を果たすことが期待される。これまでの研究成果から本治療法の免疫賦活化に関する作用機構として、松果体の内分泌あるいは神経伝達物質の関与が推察されている。 現在まで脳腫瘍患者の2小児例(視床下部に再発した悪性膠腫と松果体部に発生した悪性奇形腫)に対し、手術施行後に本治療法を被験者(患者)とその家族からインフォームド・コンセントを得た上で実施した。第一例では自宅で1年以上継続中であり、長期間NK活性が上昇している。第二例では明らかなNK活性の上昇がみられず、本法の治療効果が松果体の免疫賦活作用を介するものと示唆された。
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