我々は、従来の光フィードバック法の技法を改良して眼前に限らない部位から、あるいは両眼を完全に遮光もしくは開眼状態で反復閃光刺激を与えるα波パルス光同調法を考案した。本法は非侵襲的かつ簡便であるため、これまでに健常者数十名を対象として種々の免疫パラメーターへの影響を検討してきた。その結果、本法には選択的なNK活性を介する免疫監視能の上昇作用があることが判明した。我々が独自に考案した、このNK活性を介する免疫監視能を賦活化する光フィードバック法をα波パルス光同調免疫療法として命名した。非侵襲的で簡便な本法は免疫能の低下した難治性脳腫瘍患者にも応用可能であり、その免疫賦活機序の解析とともに治療効果(腫瘍増殖の防止ならびに再発予防作用)も検討した。 1. 脳腫瘍の術後患者に対し、本治療を開始したのち、定期的(4〜8週毎)に治療効果を評価している。難治性悪性脳腫瘍の場合には、術後標準的治療として放射線療法や化学療法を施行するため、本治療法はこれらの治療中あるいは治療後に実施した。これまで最長1年以上の長期間にわたり本治療法を施行してきた悪性グリオーマ患者1例においては、再発徴候はみられず、また血液免疫パラメーターとして放射線療法や化学療法で通常少なくとも一過性に低下するNK活性は有意な低下を示していない。 2. 我々は、これまでの研究成果からα波パルス光同調免疫療法の免疫賦活化に関する作用機序として、松果体の内分泌あるいは神経伝達物質の関与を推測している。そこで、稀な腫瘍性疾患であるが松果体部悪性奇形腫の小児患者において、腫瘍全摘後に本治療法を行い、松果体の免疫賦活作用を検討中である。 (参考事項)本臨床研究はすべて、被験者(患者)とその家族との十分なインフォームド・コンセントのもとに実施された。
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