研究概要 |
哺乳動物の中枢神経伝導路は再生しないとされるが、条件さえよければ著名な再生を示す。当研究室では、予備実験でラットの錐体路が再生し得ることを観察しており、本研究で、再生に適切な条件の解明を試みた。 8〜35日齢のWistar系ラット45匹を用いた。ネンブタール麻酔下(40mg/kg,i.p.)に、腹側から頭蓋底骨を削除し、延髄を露出した。手術用顕微鏡下に錐体路を確認し、脳底動脈を正中の目印として、直視下に、片側を切断した。術後4日〜9ヶ月の後、WGA-HRPを用いた錐体路の順行性標識を行い、再生の有無を観察した。また腰髄レベルでの再生線維の占める面積を画像解析装置を用いて計測し、再生の程度を定量化し、regeneration index(RI)とした。また切断部局所の状態を、Neutral Red染色及び、Holzer染色で観察した。 45例中、8例で著明な再生が認められ、2例は貧弱な再生であった。また術後早期観察された2例では,再生の途中経過が観察された。残り33例では、局所にglial scarが形成され再生は失敗に終わっていた。再生の起こった最高齢は29日齢であった。 著明再生例では、controlと同じく再生繊維は切断部局所を通過し、錐体交叉を形成した後、後索を下降し仙髄に達した。RIはいずれも90%以上を示した。Neutral Red染色体及び、Holzer染色では、glial scarを認めなかった。 以上より、従来の報告より、かなり進んだ日齢でもラット錐体路の自然再生が起こることが判明した。また、再生を規定する因子は、日齢よりもglial scarの形成の有無によるところが大きい。このことは、臨床治療として神経修復を考える場合、glial scarの形成抑制が重要であることを意味する。
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