研究概要 |
【目的】外傷などによる末梢神経欠損例で直接縫合が不可能な場合は自家神経移植術が行われている。しかし、自家神経移植術では縫合部が2カ所となり縫合部の瘢痕組織により再生神経の伸長が阻害されるため、神経欠損のない縫合例に比べて機能回復は劣る。神経欠損例でも関節屈曲により神経の緊張を弱め神経縫合を行い、術後徐々に関節を伸展することにより縫合した神経を延長することができれば強い緊張下での神経縫合や、神経移植を行った場合に比べて、優れた治療成績を得られる可能性がある。今回、神経欠損モデルを作製し、関節屈曲で神経上膜縫合したのち関節を徐々に伸展した神経延長法の機能回復を検討した。 【方法】体重約350gの雄Wister系ラット51匹の脛骨神経を用い、差脛骨神経を分岐部より3mm遠位から6mm切除した。強い緊張下に神経外膜縫合を行い外固定を行わなかった縫合群(17匹)、切除した神経片を用いて神経移植し固定をおこなわなかった移植群(16匹)、膝関節を130°屈曲することにより神経断端にかかる緊張を弱めて縫合し自家考案した器具を用いて膝関節130°で術後2週間固定し、その後毎日5°ずつ12日間膝関節を伸展した延長群(18匹)を作製した。各群において術前および術後2,4,8,12,16,24週に歩行解析を行いTFI(Tibial functional index)を算出し、t-検定を用いて各群を比較した。 【結果】移植群のTFIは縫合群に比べて術後8週、16週で良好な回復を示し、延長群のTFIは縫合群に比べて術後24週で良好な回復を示した(p<0.05)。移植群と延長群間にはすべての週での有意差を認めなかった。
|