研究概要 |
ウサギ脳Na^+,K^+-AIPaseを用いて、種々の全身麻酔薬およびその関連薬がNa^+,K^+-AIPaseに及ぼす影響と作用機構について調べた。その結果、フェンタニルを除くすべての麻酔薬および関連薬は、濃度依存性にNa^+,K^+-ATPase全活性と部分反応であるNa^+-ATPase活性(Na^+活性)およびK^+-pNPPase(K^+活性)を阻害した。揮発性麻酔薬においては50%阻害濃度(IC_<50>値)と一般に麻酔作用の強さの指標とされるMAC値の間に強い相関関係(r=0.938)がみられた。各麻酔薬の全活性、 Na^+活性およびK^+活性に対するIC_<50>値の順序を比較したところ、バルビタール類、ペンゾジアゼピン類、揮発性麻酔薬およびその他の麻酔薬で順序のパターンに差異がみられ、麻酔薬のグループごとに阻害機構が異なることが示唆された。そこで各麻酔薬のリン酸化反応中間体(EP)形成に対する作用を調べたところ、全活性が阻害される濃度でベンゾジアゼピン類はEP形成を抑制し、揮発麻酔薬とケタミンは抑制しなかった。ミダゾラム、イソフルラン、ケタミンの濃度を変えてEP形成に対する作用を調べたところペンゾジアゼピン類であるミダゾラムのみが濃度依存性にEP形成を抑制した。また、揮発性麻酔薬であるイソフルランにおいてEPのK^+に対する反応性は低下し、ケタミンでは増加していた。以上の結果からペンゾジアゼピン類はEP形成を抑制し、揮発性麻酔薬はEPのK^+感受性を低下させ、ケタミンはK結台酸素からのK^+遊離の過程を阻害することによってNa^+,K^+-ATPase活性を阻害することが示唆された。
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