新生児の高ビリルビン血症では光線療法によりビリルビンの脂溶性を低下させ、肝臓や腎臓からの排泄が促進される。しかし成人では体重あたりの体表面積が少ないこと等が原因となり光線療法は行われていない。本実験は緑色光の照射下に限外濾過カラムに血液を灌流し、ビリルビンを除去することを目的としている。本年度は、自然状態のビリルビンと血液をカラム内に灌流する事で、少量のビリルビンがカラム外に限外濾過されることを吸光光度の上昇により確認した。加えて、カラムに光を照射することによりビリルビンの限外濾過量が増加することを観察し当初の目的を達成した。また実験方法として、全血で行うより血球を除去した状態で灌流する事により除去効率が上昇する事を観察した。 文献によると(ZE)-bilirubinと(ZZ)-bilirubinから(EZ)-bilirubinが光による立体異性比反応により生じ、(EZ)-bilirubinから(EZ)-cyclobilirubinが構造異性比反応により産生される。(EZ)-cyclobilirubinは胆汁だけでなく尿中にも排泄されビリルビンの光線療法で重要な役割を果たしていることが報告されている。そのため、本実験においてもビリルビンがどのような状態でカラム外へ移行したか調べる必要がある。今後は高速液体クロマトグラフィーを用いて濾過液の解析を行い、除去機序の解明に努める。また臨床応用を目指し、ビリルビンのクリアランスの算出を行い、ビリルビン除去効率の上昇をはかる。
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