研究概要 |
今年度は、尿路感染症患者由来の細菌尿を直接用い、増菌培養なしで酸素電極により細菌の酸素消費量を測定し、抗菌薬の感受性を測定した。 【対象と方法】尿路感染症患者由来の細菌尿を対象として、dip slide法で10^6cfu/ml以上の菌数が確認された尿を検体として用いた。尿を遠心分離し、純水を添加して白血球などの細胞を破壊後、抗菌薬として、piperacillin(PIPC),cefazolin(CEZ),ceftazidime(CAZ),imipenem(IPM),cefoperazone/sulbactam(C/S),minocycline(MINO),amikacin(AMK),vancomycin(VCM),ofloxacin(OFLX)を選び、それぞれの抗菌薬を含む培地に菌数を10^6cfu/ml程度に調整し、酸素電極により溶存酸素濃度を1〜2時間測定した。測定結果を従来法であるWalk away法と比較検討した。 【結果及び考察】酸素電極による薬剤感受性測定までの時間は、前処理にかかる時間を含めて検体採取後約2時間であった。今回尿より分離された菌種は、E.coli,P.aeruginosa,S.marcescens,K.pneumoniae,S.epidermidisなどであり、単独菌感染では、感受性は従来法と良く一致する成績が得られたが、S.marcescensなど、菌種によっては一致率の低いものもみられた。複数菌感染では、菌数が多い菌種については、一致率が高く、菌数が少ない菌種では一致率が低い傾向がみられた。以上の結果から、細菌尿を直接用いた酸素電極による抗菌薬の薬剤感受性測定法は、2時間という短い時間で従来法に近い結果が得られることが明らかになった。しかし、菌種による不一致、複数菌感染時の成績の評価などが今後の課題であり、さらに対象を増やして検討する予定である。
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