1.抗子宮頸部腺癌モノクローナル抗体1C5と牛β-Caseinに共通する抗原(BCLP)を解析するため、抗牛β-Caseinモノクローナル抗体を作製した。そのなかの12G2抗体を用いて子宮頸部腺癌細胞株のcDNA libraryをスクリーニングし、その認識する抗原のDNA sequenceの一部680bpをクローニングしHOMOLOGYを検討したところ、正常cDNA librayのcDNAと高い相同性を示すことが明かとなった。このcDNAを発現させた蛋白が1C5と12G2の両方で認識されることをWestern blotで証明した。 2.抗牛β-Casein抗体は子宮頸部腺癌2細胞株陽性、子宮頸部扁平上皮癌2細胞株陰性、子宮内膜腺癌4細胞株中3株陽性、乳癌ならびに膵臓癌の1細胞株はそれぞれ陽性、大腸癌の3細胞株中1細胞株のみ陽性、肺腺癌細胞株では陰性、口腔癌の3細胞株では陽性で、T cell leukemiaの2細胞株は陰性で、比較的多くの腺癌細胞株に反応した。なお子宮の正常繊維芽細胞においては、免疫染色では反応を示さなかった。 3.Northern blotでは、CAC-1では2.9Kb mRNAの発現が認められたが、正常ヒト繊維芽細胞では発現は認められなかった。 4.SPOTs amino acid synthesis kitを使用し12G2の認識する抗原決定基は、IQAFLLYと言う配列であることが判明した。このアミノ酸配列IQAFLLYを合成し、ELISAにて反応を確認した。 以上よりBCLPは、癌化によって発現が増強しているか、そのアミノ酸構造が変化していることが考えられる。このBCLPの正常細胞や癌細胞の中における機能および役割については全く不明であるが、これらを検討することにより子宮頸部腺癌の癌化の過程の一部が明らかになると考える。また抗原決定基が明かにされたことから子宮頸部腺癌等の免疫療法に応用できる可能性が考えられる。
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