研究概要 |
本研究は、哺乳類内有毛細胞の電気生理学的特性を、蝸牛スライス標本を作成することにより明らかにすることを目的とし、本年度の実験で内有毛細胞、外有毛細胞及び一部蝸牛神経終末を含むスライス標本を作成することができた。 1.スライス標本の作製:モルモットの蝸牛からコルチ器を含む組織を周囲骨組織からartificial perilymphの中で注意深く取り出した。この際、倒立顕微鏡下で27ゲージの針を用いることにより、容易にかつ素早く周囲組織からコルチ器を取り出すことができた。さらに取りだした組織を、2.5パーセントのアガロース(低温度溶解タイプ)に包理した。冷却し充分に固まった後、バイブラトームを用いて厚さ約100-150μmの標本を作製した。標本を顕微鏡のステージ上のchamberに置き、peristalitic pumpを用いて予め酸素を飽和しておいたartificial perilymphで潅流した。スライス標本はチェンバー上にメッシュで固定した。この方法によりスライス標本は数時間良い条件で維持することができた。 2.内有毛細胞の電気生理学的特性の測定:標本断面の挫滅した組織は内径約10μmのガラスのsuction electrodeを用いて除去し、内有毛細胞、及び、外有毛細胞表面を露出させた。一般に細胞を単離する際にはcollage nase,papainと言った蛋白分解酵素を用いるため、細胞の表面がある程度smoothになり、patch electrodeを用いて細胞膜にsealさせることは比較的容易であるが、内有毛細胞は周囲の支持組織が強いため、細胞表面がroughでsealさせることが困難であった。そのため、pipetteからpapainを入れた溶液を細胞表面のシナプス構造を破壊しない程度に吹きかけることにより細胞表面をクリーニングする手法を確立し、今後実験を続ける予定である。
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