網膜において虚血再灌流後には血管内皮には様々な接着分子が発現し、白血球の集積に関与していると考えられている。これまで網膜虚血再灌流後に網膜血管内皮に発現している接着分子の検討は生化学的、または組織学的な方法に限定されていた。そこで、今回我々は網膜血管内皮に発現している接着分子intracellular adhesion molecule-1(ICAM-1)、P-selectinの発現を生体内で観察し、定量する方法を試みた。方法としては抗ICAM-1抗体、抗P-selectin抗体をFLUOTAGを用いてFITCで標識した。 1mgの抗体を緩衝液内でFITCと室温下に2時間かけ結合させた。Sephadex G-25Mカラムにより結合しなかったFITCを除去し、FITC標識された抗体を分離した。有色Long-Evansラットに対し、全身麻酔下に視神経結紮術により60分の網膜虚血を作成した後、再灌流させた。様々な再灌流時間の後、再び、全身麻酔下に尾静脈にカテーテルを留置し、標識した抗体を2mg/kg投与した。ラットの眼底は走査型レーザー検眼鏡(SLO)を用いてargon laserを励起光として観察し、動画としてS-VHSビデオテープに録画した。SLOによって得られた画像はコンピューターに取り込み、画像解析ソフトを用いて種々の解析を行った。 励起光のargon laserの強度、filterゲインを様々に変化させたが、今回の研究ではSLOによりFITC標識された抗ICAM-1抗体、抗P-selectin抗体の蛍光を充分なコントラストでとらえることはできなかった。励起光のargon laserの強度を更に強くし、抗体分子に対する、FITC分子の結合比率を更に大きくすることにより、ICAM-1、P-selectinの発現を生体内で観察することが可能になる可能性があると考えられた。
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