眼の免疫学的特殊性を形成/維持する一つの機構として、前房内免疫偏位(anterior chamber-associated immune deviation:ACAID)という現象が知られている。これは、前房内に抗原を注入すると、その抗原に対する遅延型過敏反応(DTH)の誘導が抑制がされる現象のことである。今回この現象の誘導のされ方に注目して、Fasリガンドの欠損したC57BL/6-gld/gldマウスにおいて解析した。その結果、コントロールのC57BL/6マウスにおいて、DTHの誘導が抑制されている、則ち、ACAIDが誘導されているのに比べ、C57BL/6-gld/gldマウスにおいては、DTHの誘導が抑制されていることはない、則ち、ACAIDが誘導されていないことが判明した。また、Fasの欠損したC57BL/6-lpr/lprマウスにおいては、DTHの誘導が抑制されて、ACAIDが問題なく誘導されていることが判明した。また、Fas-Fasリガンドの反応を抑える抗体を投与したところ、一定期間はACAIDの誘導が障害(DTHの誘導が確認)されたが、その後ACAIDが誘導(DTH誘導が抑制)されていることを確認した。このことは、Fasリガンドを介するシステムが、眼の免疫学的特殊性のありかたを規定している重要な一つの因子であることを示している。また、その働きを一時的に抑制、あるいは促進する抗体により、免疫環境の修飾ができる可能性も確認された。
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