研究目的:免疫における異物除去には種々な機構があるが、現在は、主に細胞レベルでの除去が中心的に調べられている。本研究では、異物の集団あるいは全体をカプセル状の構造で包み込み、排除する機構を検討することを目的としている。実験動物での特殊な方法での予備実験(Endodont Dent Traumatol:in press)で、膜状構造によるカプセル化が明瞭に示された事を受けて、本研究が計画された。本研究は萌芽的研究であり、この成果を持ってさらに薄膜状の被膜の本体について詳細な検討を行う事が必要であるが、その前段階として、本研究では以下のような事項を見極めようとしている。 研究成果と今後の検討: 1)この研究目的のために、細菌性の異物の排除のモデルとして、長期にわたって細菌が感染している慢性反応病巣を人工的に、容易に作れる動物モデルが必要。 特殊な人工高分子物質で包埋した細菌を用いて系で、結合組織に慢性病巣を容易に、効率良く作り出すことができた。 2)人工高分子物質で包埋した細菌を動物に注入し、人工高分子物質に吸着・吸収されていく物質が、免疫細胞から分泌されるものか、細胞由来のものか? 病理組織学的に検討し、免疫細胞性の可能性が高いことを示した(Arch Oral Biol;in press)が、さらに免疫組織学的に、また、免疫細胞の機能に関連させて検討する予定である。これとは別に、線維性の境界が作られ、健全部と病変部が極めて明確に分断される。この機構についても検討が必要となっている。 この様な研究成果は、免疫における新しい異物の排除機構としての「異物カプセル化による排除の機構」の概念をもたらす可能性がある。
|