研究概要 |
放線菌症病巣では、ドルーゼと呼ばれる細菌塊が作られ、内部に放線菌が閉じこめられ、生きた細菌も含まれている。バイオフィルムと呼ばれる免疫機構からの細菌側の防御機構と考えられてきたが、逆に生体側の細菌塊からの遮断作用、あるいは包埋・除去作用と考えられるものである。本研究は、萌芽的研究として、この様に、生体が異物の集団あるいは全体をカプセル状の構造で包み込み、排除する機構を検討することを目的とした。 この研究目的のために、細菌性の異物の排除のモデルとして、細菌が病巣に長期にわたって生存し、感染している慢性感染病巣を容易に、人工的に、作れる動物モデルが必要であったが、アルジネートポリマーで包埋されたActinomyces israeliiの菌体をラット腹腔へ注入することによって、腹腔壁に慢性病巣を効率良く作り出すことができ、そこにはドルーゼと極めて類似した細菌塊構造が作られていた(Endodont Dentl Traumatol 14:137-143,1998)。形成された病巣を病理組織学的、微細構造学的に検討したところ、その異物カプセル化には病巣に集合した好中球が大きく関与しており、好中球の層と細菌塊の層と境界にカプセルが形成されているが観察された(Endodont Dentl Traumatol 14:137-143,1998)。この細菌・アルジネート複合体に吸着・吸収され、被膜を形成する物質は、塩基好性を示し、生体免疫細胞(恐らく好中球)に由来すると思われ、免疫細胞から分泌されて、細菌集団を被膜している可能性が高いことを示され(Arch Oral Biol 43:485-496,1998)、免疫における新しい異物の排除機構としての「異物カプセル化による排除の機構」の概念をさらに検討する必要性が明確となった。
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