研究概要 |
(1)歯肉上皮は解剖学的にjunctional epithelium,sulcular epithelium,そしてoral gingival epitheliumと分類され、それぞれに発現するケラチン蛋白が異なっている。既に得られている歯肉組織に由来する上皮細胞のうち主としてGE1とGE6の2株について、抗ケラチンモノクローナル抗体(k4,k10,k13,k19)と顆粒層の表層細胞の細胞膜肥厚の構成分子であるインボルクリン、そしてケラトヒアリン顆粒の構成分子のひとつであるフィラグリンの局在を免疫組織学的染色で検討し細胞学的特性を解析した。GE1とGE6細胞はどちらも通常の単層培養を1週間以上継続するだけで、多層となり、微細形態学的に重層扁平上皮類似の構造を形成した。GE1とGE6細胞両株のsuprabasal cellがk4とk13(粘膜上皮に特徴的)が陽性で、k19(単層上皮の特徴的ケラチン)は陰性であった。今回用いたsubmerged cultureでは電顕的には角質層は形成されなかったが、免疫組織学的染色では高分子量ケラチンであるk10陽性細胞がまれに重層化した細胞層の表層にみられ、またインボルクリンやフィラグリンも同様の部位に検出された。こららの結果からGE1とGE6はsulcular epitheliumの特徴をもち、さらに重層化した部位の表層細胞は角化の所見を示しているので、潜在的にはoral gingival epitheliumの特徴ももっているとみなされた。 (2)細胞は樹立された培養条件(10ng/ml EGF,1%fetal bovine serumを含むSFM101培地(ニッスイ)、33℃、5%CO_2)で継代培養されている。様々な刺激因子に対するサイトカインの発現を検討し、炎症時における上皮細胞の関与を解析した。細胞をLPS(E coli由来)、LTA(Streptococcus sangius由来)Abiotrophia adiacensとStreptococcus anginosusなどで4時間刺激した後にRNAを抽出し、RT-PCR法でIL-1α、IL-1β,TNF-αの発現を検討した。両GE細胞ともにLPS刺激によってIL-1βとTNF-α発現が誘導され、炎症時における上皮細胞の関与が示唆された。
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