【研究目的・方法】 われわれは、異なったタイプのカルシウムチャンネルがそれぞれ三叉神経運動ニューロンのスパイク後脱分極電位と後過分極電位の形成に関与していることを示してきた。そこで本研究はパッチクランプがより良い状態で適用できる三叉神経運動ニューロンの培養系を開発し、三叉神経運動ニューロンにおい各タイプのカルシウムチャネルがどのように細胞内に分布しまた種々の機能に役立っているかを明らかにするために、三叉神経運動ニューロンに細胞内カルシウム濃度測定法およびパッチクランプ法を同時に適用し、三叉神経運動ニューロンの性質を光学的・電気生理学的に調べることを目的とした。平成9年度は、既に本研究室で開発済の三叉神経運動ニューロンを含むスライス標本を用い、パッチクランプ法により新生仔ラットの三叉神経運動ニューロンの低電位活性型カルシウムチャネルの性質を調べ、以下のことが明らかとなった。 【研究成果】 1.膜電位を-90mVに過分極させてから脱分極パルス通電を行った時の細胞内電位を記録すると、カルシウム依存性のlow-threshold spikeが認められた。 2.膜電位固定法によって保持電位-90mV、から種々の電位の200ms脱分極パルスに対する電流応答を記録すると、閾値が-65mV前後で不活性化の速い低電位活性型カルシウム電流と、閾値が-40mV前後でピーク電流が大きく低電位活性型に比べて不活性化の遅い高電位活性型カルシウム電流が認められた。 以上の結果から新生仔ラットの三叉神経運動ニューロンにおいて、閾値が-65mV前後で不活性化の速い低電位活性型カルシウム電流と、閾値が-40mV前後でピーク電流が大きく低電位活性型に比べて不活性化の遅い高電位活性型カルシウム電流が認められ、低電位活性型カルシウム電流は、発火パターンなどニューロンの活動に影響を与えていると考えられる。
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