これまでに、マウス筋芽細胞(C2C12)を組み換え体ヒトHGFの存在下で培養することで、DNA合成および細胞数の増加を確認した。またin vitroでは、HGFがオートクリン的に筋芽細胞の分化と増殖を調節していることを確認した。そこで、さらにin vivoにおいて、HGFが舌筋の分化と増殖を調節しているか否かを検討するため、以下の実験を行った。 まず、胎生10日のマウス胚より、将来舌に分化する第一鰓弓を得て、HGFとその受容体であるc-Metが発現しているか否かをRT-PCR法により検討したところ、両遺伝子ともに発現していることを確認した。次にHGFとc-MetのmRNAレベルでの発現の三次元的な分布の経時的変化を検討するため、digoxygeninでラベルしたRNAプローブを作成し、ホールマウントin situハイブリダイゼーション法を胎生10日から13日のマウス胚に行ったところ、両遺伝子とも胎生10.25日ごろから発現が増し、12.5日ごろを最高に、次第に減弱するという結果が得られた。また、c-Metの発現部位と筋組織のマーカーであるデスミンの免疫染色による被染色部位は、大部分一致していた。 さらに、胎生10日のマウス胚の第一鰓弓を無血清のBGJB培地で120時間培養し、in situハイブリダイゼーション法でHGFとc-MetのmRNAレベルの舌相当部での発現を検討したところ、両遺伝子ともに染色はin vivoの時よりも薄いが、c-Metの発現部位とデスミンの免疫染色による被染色部位と大部分、一致していた。 以上の結果は、HGFが舌筋の分化と増殖を調節していることを示唆するものである。
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