方法)ウイスター系ラットの上下顎切歯を抜去、歯根部分を取り出し、矢状面で割断、歯髄組織を除去したもの実験材料とした。作成したものを以下の条件で保存した後ラット頭部皮下に埋入し、4週後に屠殺、組織切片を作成し光顕的観察を行った。 保存条件) 1.コントロール群として抜去後即時埋入を行う。 2.実験群としては抜去後氷温条件下で2日間保存したものを用いる。 実験群はさらに現在組織保存液として用いられている生理食塩水、MEMにそれぞれ保存して比較した。 結果)実験群、コントロール群ともに様々な程度の歯根吸収が観察され、有意差は認められなかったが、コントロール群の方が歯根吸収の程度が軽度な傾向にあった。 考察)今回実験群、コントロール群とも有意差が認められなかったことにより歯牙の氷温保存の可能性が示唆された。しかしコントロール群においても様々な程度の歯根吸収が観察されたことから、試料作成の際の歯根膜の損傷があるものと考えられる。ラット切歯歯根部の歯根膜組織は大型の実験動物に比べルーズに付着しており、実験操作中に剥離しやすい傾向にある。そのため歯根吸収が歯根膜細胞の氷温保存の問題か試料作成上の問題か判別しにくいため実験材料を再考する必要があると考えられる。また氷温条件の設定においても±0.1℃の変動に制御する必要があると考えられるが、今回実験に使用した低温インキュベータ-は庫内温度が一定せず、保存する場所によって温度差を生じている可能性があり、現在検討中である。
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