平成9年度は、E.COliにアルカリフォスファテース(PhoA)遺伝子を導入しその酵素活性を人為的に上昇させ、適切な条件下で培養すると菌体内に針状結晶の生じることを明らかにした。平成10年度は、このシステムをう蝕原性細菌に応用して以下の実験を行った。使用した菌種として、口腔常在性乳酸菌近縁の乳酸菌(Lactococcus lactis)を用いた。 (1) 乳酸菌の人為的石灰化の可能性 E.coliより粗精製したPhoAと、グリセロリン酸カルシウムを培地中に添加しL.lactisを培養したところ、乳酸菌の産生する酸によって培地のpHが低下することが明らかとなった。そこで、種々検討した結果、炭水化物を含まない培地を用いることによって、この点を改善することができた。菌体を回収し凍結乾燥後、フーリエ変換赤外分光分析を試みたところ、既知のハイドロキシアパタイトのピークと一致する新たなスペクトルを証明できた。 (2) 乳酸菌のPhoA遺伝子のクローニング 乳酸菌においては、いまだPhoAの存在および遺伝子配列に関する報告がない。そこで、E.coliのPhoA遺伝子をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行ったが、明らかに反応するバンドは検出できなかった。そこで、PhoA活性を有する他の菌種において保存されている領域のアミノ酸配列をもとにプライマーを設計し、PCRを行った。その結果、期待される約140bpの位置にバンドを認めることができた。
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