研究概要 |
口腔内のような制限ある空間での操作が容易であると同時に、臨床的な修復範囲の被着面に対する接着強さを測定することができるin-vivo/in-vitro両用小型接着試験器を平成8年に試作した。この試験器に対し、1.被着面に圧接固定する誘導ガイドチップを透明材料のディスポ-サブルとする。2.患者の顎位安定化と共に、試験器の操作性向上のためin-vivo用接続アームを長くする。3.口腔内被着面に対する誘導ガイドチップの3次元的位置微調整が行える歯科診療台用位置決定器を作製する。以上、3点の改良を行った。その結果、各改良点は、1.光重合(硬化)型歯科材料の初期接着状態の向上に加え、被着面に対する各種材料の垂直的誘導を容易かつ正確にし、また、感染対策としても有効であった。2.in-vivo接着強さ測定時の失敗例が減少すると同時に、被検者である患者を測定による苦痛感や不快感から大いに解放した。3.本試験器を用いたin-vivo接着強さの測定上、最も重要な口腔内被着面に対する誘導ガイドチップの位置決定を容易かつ確実なものとした。 さらに、この改良型試験器の基本的測定特性と精度に関する実験を行った結果、本試験器による測定方法と得られる測定値の精度は、従来の万能試験機を用いた引張試験法および測定値の精度と同等であることが判明した。なお、実際の現象値Ygと測定値Xgの間には、Y=0.8115X-9.3が成立していた。 また、レジン接着システム(Single Bond:SB, Scotchbond Multi-Purpose:MP, Clearfil Liner Bond II:LB)のくさび状欠損部露出象牙質に対するin-vivo/in-vitro接着強さ(MPa)はSB15/16,MP10/10を示し、対う蝕罹患部象牙質値はMP10/11,LB11/11であった。したがって、日々の臨床において修復対象となる頻度の高いこれら2種象牙質においては、in-vivo/in-vitro値間に差はないものの、健全象牙質に比べ接着強さを獲得しにくい被着体であることが示唆された。
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