研究課題/領域番号 |
09877381
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
芝 〓彦 昭和大学, 歯学部, 教授 (70013969)
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研究分担者 |
中根 宏之 昭和大学, 歯学部, 助手 (60286854)
瀧澤 秀樹 昭和大学, 歯学部, 講師 (50236387)
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キーワード | 氷温 / 歯の再植 / 歯の移植 / 歯根膜 / 歯の保存液 |
研究概要 |
本研究の目的は氷温技術を用いて歯の移植・再植のための歯根膜の長期保存法の確立にある。まず適切な氷温温度を決定するためにラット(雄性、Wistar系)の単根歯を抜去し、4種類の保存液(UW液、Euro-collins液、細胞培養液、生理食塩水)を用いて氷温冷蔵庫で温度を変化させて保存した結果、-2℃が良好であることが判明した。そこで4種類の保存液に1、2、4日間、1週、2週、3週、4週間保存した歯の歯根膜を剥離し、OUT-GROTH法にて培養し、歯根膜細胞の活性を観察した。また蛍光二重染色法によって細胞レベルで検索した。その結果、4種類の保存液におけるそれぞれの最長保存期間はUW液では21日間、Euro-collins液で7日間、細胞培養液で7日間、生理的食塩水で4日間であった。蛍光二重染色法による生細胞の蛍光量はUW液保存例が他の液の保存例と比較して生細胞のラベル数が最も多かった。 以上の結果より、UW液、-2℃氷温保存が最も良好な方法であることが判明した。 そこで成犬を用いて自家再植実験を行った。実験は雑種成犬を用い、下顎前歯を左右一本ずつ抜歯後、UW液中に-2℃(氷温)と4℃で7日間保存した。保存後自家再植を行った後、14日後に屠殺し、X線学的、組織学的検索を行った。その結果X線的所見では氷温保存および4℃保存例ともに歯根膜腔の拡大を思わせる一層の透過像が認められ、両者に差異は認められなかった。一方組織学的所見では氷温保存例では連続性を認める歯根線維が規則的に走行し、歯根吸収像は少なく、小範囲であったのに対して4℃保存例では歯根膜線維の走行は不規則で、歯根の随所に広範囲に及ぶ歯根吸収が見られ、歯槽骨表面にアンキローシスの初期段階と思われる像が観察された。 以上の結果より、氷温保存は歯の移植、再植の保存に有用であり、長期間保存への可能性が示唆された。
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