平成9年度は「ヒト口腔癌細胞の株化」を実験の中心としてきた。 1)生検材料 東京大学附属病院口腔外科にて手術した口腔癌を材料とした。 症例は臨床症状から悪性腫瘍を疑われたものをさらにbiopsyによって病理学的に診断をし、選択した。 その原発部位の内訳は舌5例、口底部1例であった。 病理学的にはいずれも扁平上皮癌(squamous cell carcinoma)であった。 2)マウスへの移植 手術によって切除された癌組織を1〜2mm角に刻んで移植片とした。 SCIDマウス(免疫不全マウス)の頚背部皮下へ移植し、経過を観察した。 3)現在までの経過と結果 全6例中で1例を除いてマウスへの癌細胞の生着は、成功しなかった。 残りの1例では腫瘤を形成したが、オリジナルの癌細胞由来であるか、継代が可能かなどについて検索中である。 4)考察 生着率が低いことについてその原因を検索中である。 考えられる要因としては、移植片に問題があるの可能性がある。つまり採取した癌組織の壊死部分が多く含まれた部分を移植片としていることが考えられる。今後は移植部位、移植片の容積などの条件も検討し、常に株化および継代が可能である実験系を構築する予定である。
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