ニホンザル成猿雄を用いて、両側性人工顎裂モデルを作製し、二次的骨移植術、特にrhBMP-2移植による骨形成につき検討を行った。 ・方法:ニホンザル成猿雄11頭を用いた。両側性人工顎裂のうち右側は9頭に脛骨より採取した骨髄を、2頭にポリ乳酸・グリコール酸共重合体ゼラチン複合体(PGS)を移植し対照群とした。左側は実験群とし、2mg/mlの濃度のrhBMP-2をPGSの坦体に吸着させて用いた。実験群は4群に分け、Group1:BMP単独移植群(N=3)、Group2:BMPと骨髄が4:1の混合移植群(N=2)、Group3:BMPと骨髄が3:1の混合移植群(N=3)、Group4:BMPと骨髄が1:1の混合移植群(N=3)とした。それぞれ移植後12週に屠殺し、X線的、組織学的に評価検討した。 ・結果:対照群ではpositive control群である骨髄移植群では9顎裂のうち8顎裂に骨架橋形成がみられた。Negative control群であるPGS単独移植群では2顎裂とも骨形成はみられなかった。実験群では、Group1では、3顎裂のうち1顎裂に骨形成がみられたが、2顎裂は骨形成は見られなかった。Group2では、2顎裂ともに骨架橋形成がみられた。Group3では、3顎裂のうち1顎裂に骨形成、2顎裂に骨架橋形成がみられた。Group4では、3顎裂のうち2顎裂に骨形成、1顎裂に骨架橋形成がみられた。X線および組織学的には、骨架橋形成された顎裂部はコンタクトマイクロラジオグラム(CMR)や非脱灰研磨標本のトルイジンブルー染色でも皮質化した移植骨の連続性が確認された。以上のより、血流に乏しい瘢痕組織および皮質骨に囲まれた条件の下においてもrhBMP-2は骨髄と混合させることにより骨架橋形成が得られ、顎裂部骨移植の際の補助的な材料としての有用性は示唆された。しかしながら、再現性に乏しく、rhBMP-2と骨髄の最適比率についての結論は得られなかった。
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