研究概要 |
当科患者の放射線および抗癌剤(ブレオマイシン)治療前後の検体の遺伝子を比較検討し,放射線耐性遺伝子あるいは抗癌剤耐性遺伝子の解析を行った。また患者の未治療の検体から癌細胞株を作製し,それらに対し,抗癌剤(ブレオマイシン,シスプラチン)耐性癌細胞株を樹立した。 1.放射線およびブレオマイシン治療前後の検体から,DNAを抽出し,Aluのプライマー(岡山大学病態遺伝学の清水憲二教授より譲与)の組み合わせ(10組)にて,Inter-AlulongPCR法によるGenomicFigerPrint法(ヒトゲノムDNA中に存在するAlu配列を利用したPCR法)を行った。治療前後にて相違のあるバンドのうち,5検体に共通なバンドを3種類認め,耐性遺伝子の可能性が考えられた。これらに対し,ダイレクトシークエンスを行ったが,エラーが多いため,クローニングを行い,同定を行っている。また,摘出物の量的問題により,TotalRNAが抽出できた検体が2種類に限定され,これらに対し,240種類のプライマーを用い,DifferentialDisplay法を行った。発現の相違のあるバンドを6種類認め,その中でノーザンブロット法にて確認できたものが,2種類あったので,クローニングを行っている。 2.当科患者の未治療の検体から,粘表皮癌細胞株MQ-SH,頬粘膜癌細胞株SQ-UTを樹立し,ブレオマイシンまたはシスプラチン0.1μg/mlを培地に添加し,1μg/mlまで徐々に濃度を上げ,耐性癌細胞株を6か月かけて樹立したところである。これらの耐性・非耐性癌細胞株に対し,GenomicFigerPrint法やDifferentialDisplay法を進めている。また口蓋(原発巣,リンパ節転移巣),舌(2種類),舌癌リンパ節転移巣(2種類),舌癌皮膚転移巣由来の癌細胞株を樹立したので,各々に対し,同様に耐性癌細胞株を作製しているところである。放射線耐性癌細胞株は今回樹立できなかった。
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