研究概要 |
口唇裂、口蓋裂は世界のすべての民族に認められる発生頻度の最も高い先天奇形の一つであるが、その発生機序については、口唇、口蓋の癒合不全とapoptosis,programmed cell deathとの関連、または形質転換によるものなど明らかではない。そこで、口唇、口蓋の癒合がapoptosis,programmed cell deathによるものか、それとも形質転換によるものかを証明し、発生時の形態形成に大きくかかわっていることが予測される接着性因子の存在を確認するために以下の実験を行った。 (1)正常マウスの胎児を用いて、口唇、口蓋の各発生時期ごとにin situ hybridization法を応用したTUNEL法を用いてapoptosis関連抗原の存在を確認することで口蓋および口唇の癒合期にapoptosisが起きているかを検証する。 (2)正常マウスの胎児を用いて、口唇、口蓋の各発生時期ごとに免疫電顕法により、口唇、口蓋癒合期に形質転換が起こっているかを検証する。 (3)正常マウスの胎児を用いて、口唇、口蓋の各発生時期ごとに免疫組織学的手法により、口唇、口蓋における接着性因子の時間的、空間的変化を観察する。 結果 現在まで、口唇、口蓋の癒合期にapoptosis,あるいはprogrammed cell deathが起きているのか、形質転換が起きているのか、いずれも確定的な証拠は得られていないが、適切な発生時期のマウス胎児で実験する必要があるため、細かな発生時期の胎児を摘出し、実験を繰り返すことでそれを克服し、検証しなければならない。また、形態形成に関わる接着性因子についても、多種におよぶ接着性因子のなかでどれが特異的かを証明するのはもう少しマウス胎児の数が必要である。
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