本研究初年度の本年は口腔癌免疫療法の基盤となるような諸種の研究を行った。口腔癌のなかでも口腔の特色となるような下顎歯肉癌については、T分類法を過去の研究から下顎管にまで画像診断上で腫瘍浸潤が考えられるものをT4と判断するいわゆる下顎管分類を用いた場合の下顎切除法について検索した。また口腔扁平上皮癌については講座にて経験している過去の症例から症例の予後をもっとも左右する臨床的ならびに病理組織学的因子を多変量解析によって解析した。その結果からはT分類、治療方法、組織学的腫瘍浸潤様式がおのおの独立した予後規定因子として重要であることが判明した。口腔癌患者から生検時ならびに切除手術時い口腔癌腫瘍組織を採取し、口腔癌細胞を分離、培養することを試みた。そのうち舌原発で口底と下顎歯肉に浸潤する1例では培養細胞の樹立が得られ、細胞は多角形で敷石状に配列し、細胞倍加時間は28時間で染色体数は68から80本に分布しており、ヌードマウスへの移植では可移植性で、病理組織学的には高分化型扁平上皮で原発巣に類似していた。培養液中にはIL-6が高濃度でみられ、培養細胞の免疫組織化学的にはIL-6セレプターの発現も高く、オートクライン機構による増殖も示唆された。Costimulatory分子については今後検索していく予定である。
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