研究概要 |
p53遺伝子欠失C57BL/6マウス(p53^<-/->マウス)および正常57BL/6マウスの口腔粘膜上皮細胞を用い、主として細胞周期制御機構の面から発癌機序を解析し、以下のような結果が得られた。 1p53^<-/->マウスから採取した口腔粘膜上皮細胞は、正常マウスのそれと比べて増殖能が高く、かつ培養可能期間が長かった。ただし、両者には形態学的な違いはみられなかった。 2培養細胞にEGF,IL-1αなどの成長因子を添加すると、p53^<-/->マウス由来の口腔粘膜上皮細胞の増殖速度が正常マウス由来のものと比較して有意に律速された。 3成長因子によるp53^<-/->マウス口腔粘膜上皮細胞の増殖能の律速は、成長因子のレセプターの増加によるものではなかった。 4フローサイトメトリーによって細胞周期を検討したところ、p53^<-/->マウスの口腔粘膜上皮細胞では成長因子の添加によりG1期が短縮しており、G1停止が起こりにくくなっていることが判明した。 5p53^<-/->マウスの舌に発癌物質である4NQOを7日間塗布した後、c-myc,c-fosmRNAの発現を検討したところ、4NQO処理によってc-mycmRNAの発現はp53^<-/->マウスおよび正常マウスいずれにおいても増強された。一方、c-fosmRNAの発現は、p53^<-/->マウスで抑制され、正常マウスでは変化がみられなかった。 以上の結果から、口腔粘膜の癌化にはp53が関与する経路とp53非依存性の経路の異常の両方が関与している可能性が示唆された。
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