まず、ラットの上顎臼歯歯冠を削除して下顎臼歯への咬合圧を排除することにより、歯根膜微小血管に対する咬合機能低下の影響を、免疫組織化学的かつ定量的に検討した。微小な血管壁の同定には血管内皮細胞と特異的に反応する抗von Wille brand factor抗体を用いた。その結果、対合歯を削除して1週後の歯根膜では、血流のある血管の割合は有意に減少し、多くは閉塞していた。3ヶ月後では、閉塞した血管は減少していたが、血管断面積は有意に細くなり、総血管数も有意に減少していた。このように、咬合機能の低下は歯根膜血管に対し、閉塞という初期の変化から、血管数の減少という組織変化にいたる影響をおよぼすことが明らかとなった。 また、加齢による歯根膜の性質の変化を知るため、老齢ハムスター頬袋の単一細静脈に0.8秒周期の圧刺激を加えて刺激前後の白血球の転がり数を計測することにより、間歇的な圧刺激に対する微小血管の反応を若齢ハムスターと比較検討した。その結果、若齢に比べ老齢では、白血球の転がり数が有意に増加するまでの時間および回復するまでの時間が遅れる傾向がみられた。すなわち、若齢者に比べ老齢者においては、間歇的な機械的刺激に対する微小血管系の応答および回復が遅れることが明らかとなった。 今後、in vivo歯根膜微小血管モデルにおいて単一細静脈に外力を加えた際のnitric oxide濃度の推移、および咬合機能の低下時や歯の移動時に血管が閉塞した際のnitric oxide合成酵素の歯根膜内における局在を明らかにし、外力に対して歯根膜微小循環系が応答する際のnitric oxideの役割を検討する計画である。
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