突き合わせ加圧式溶接機(増永眠鏡製)を購入し、超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーの、Co-Cr合金ワイヤーやステンレス鋼ワイヤーに対する突き合わせ加圧溶接を試みた。溶接条件として、通電量、加圧力、アップセット量(溶融金属量)、アルゴンガス流量を様々に変化させた結果、これまで困難とされてきた超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーの溶接が、Co-Crワイヤーやステンレス鋼ワイヤーを対象に十分な接合強度を持って、実現可能となった。 すなわち、サイズ0.016×0.022inchの角型ワイヤーを用いた検討では、Co-Cr合金ワイヤーを対象にした溶接体は、母材である超弾性型Ti-Ni合金ワイヤー自体と同等の引張強度およびねじり破断強度が達成され、引張破断試験およびねじり破断試験ともに、溶接部以外の超弾性型Ti-Ni合金ワイヤー部分にて試料の破断は生じた。 同時に、走査型電子顕微鏡を用いて、溶接部接合界面の金属組織学的な検討を行った。その結果、Ti-NiとCo-Crの境界面では、接合時に生じた溶融金属の残留は認められず、また、両金属の溶融により生じた反応相の幅も溶接機の加圧力により極めて狭く抑えられているのが認められ、これらが接合強度の向上に大きく寄与しているものと考えられた。 さらに、ねじり試験機を用いた溶接体のトルク-ねじり曲線の測定では、溶接体は母材の超弾性型Ti-Ni合金ワイヤー同様の良好な超弾性特性を示し、接合の際発生する熱による超弾性特性への影響はほぼ抑えられているのが確認された。 以上の結果より、この溶接技術を用いて、超弾性型Ti-Ni合金ワイヤーとCo-Cr合金ワイヤーを組み合わせた新たな矯正装置の設計が可能となったものと考えられた。
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