現在までに、エイズ治療薬として臨床において使われている物質は、エイズウイルス(HIV)自身が持つ逆転写酵素と蛋白質分解酵素(プロテアーゼ)に対する阻害剤である。また、逆転写酵素阻害剤の場合、その酵素のRNA依存性DNAポリメラーゼ活性を対象としたものである。我々は、新たにHIV由来逆転写酵素が持つRNaseH活性を阻害する物質(分子)を天然薬物から探索することを計画した。今回、この探索スクリーニングのためのアッセイ実験系を確立するために、その予備的実験を行った。 多種多様の実験サンプルを迅速、簡便かつより正確にアッセイするために、基質となるDNA・RNAハイブリッドは、ラジオアイソトープでラベルしない特定の塩基配列をもったオリゴヌクレオチド(d-GTCATCTCCとr-GGAGAUGAC)を用いた。Mg^<2*>を含むpH7.7の緩衝溶液中、HIV逆転写酵素と上記のオリゴDNA・RNAハイブリッドをインキュベートした後、加熱して反応を止めた。この反応混合物を、逆相のHPLCにより分離、分析し、出発物質であるRNA9-merの定量を行った。酵素を含まない反応混合物中のRNA9-merの量と比較することにより、反応の進行度(%)を計算した。この方法及び実験系により、HIV逆転写酵素のRNaseH活性を追跡することが可能となったので、今後、阻害剤のスクリーニングに応用していく予定である。
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