計画書に従い、ビ-β-ナフトールに対して高い対掌体認識能を示す芳香族アミジン誘導体(1)の大量合成を行った。その際に合成経路の再検討を行い、アミジン誘導体(1)のより効率的な合成法を確立することに成功した。得られたアミジン誘導体(1)とビ-β-ナフトールとの体掌体選択的な会合過程の熱力学的パラメータ(エントロピー及びエンタルピー変化)を求めるために、263Kから298Kの間で温度を変化させて、NMRを用いた滴定実験を行い各温度における会合定数を求めた。van't Hoffプロットからジアステレオマ-錯体化に関するエンタルピー変化を求めると、安定系では約13Kcal/mol、不安定系に対しては8.5Kcal/molが得られた。これらのパラメータは、アミジン誘導体(1)とビ-β-ナフトールとの分子間水素結合の強度としてとらえることが出来る。また、会合の化学量論を正確に決定するために、IRスペクトルを用いて、Jobプロットを行った。その結果、可逆的な錯体化に対して1:1の化学量論を決定することが出来た。このことから、先に求めたエンタルピー変化は、二本の分子間水素結合に対応することが確認され、アミジン基とフェノール性水酸基間の水素結合強度に対する基本的なパラメータを確立することに成功した。また、芳香族アミジン誘導体(1)の類縁体としてより水素結合能が高いと期待される脂肪族アミジン誘導体(2)を設計し、その効率的な合成経路を確立した。
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