研究概要 |
申請時の予備実験の結果であるATPがアルブミンに結合することを確かめ、その結合を限外ろ過法およびNMRによって詳細に調べた.結合はpH依存的であった.Scatchardプロットにより、pH5.4,6.4および7.4で、解離定数はそれぞれ13,40および120μMであった.pH8.4では結合しなかった.ATP:アルブミンの結合比はすべてのpHで1:1であった.アルブミンの2量体にはATPは結合しなかった.この解離定数は^<31>P-NMRの化学シフトから求められた値と良く一致した.アデノシンは結合を阻害しなかったが、GTP、dCTP、ADP、UTP、AMP、リン酸およびピロリン酸の阻害定数は、それぞれ、25,32,36,50,130,1000および186μMであった.ラウリン酸やパルミチン酸のような脂肪酸はATPの結合を妨害しなかった.ワルファリンは結合を非拮抗阻害した.C1^<-1>は拮抗阻害し、その阻害定数は20mMであり、その値はClのBSAに対する第2結合部位に近いので、ATPはClの第2結合部位に結合すると結論した. ATP結合の温度依存性から、pH7.4で結合に伴うΔH=-11.3kcal/mol、ΔS=-20.1cal/K/mol、ΔG=-5.31kcal/molであった.また、滴定型熱量計で直接測定したΔHと極めてよい一致を示した.
|