メガリンは分子量約600kDのLDLレセプターファミリーであり、腎尿細管上皮細胞の管腔側に多く発現している巨大膜蛋白である。最近メガリンが、アプロチニンやアミノグリコシド等のカチオン性物質のみならず、アルブミンのようなアニオン性物質に対してもレセプターとして働き、これら物質をエンドサイトーシスにより管腔側から上皮細胞内へ取り込むとの説が提唱されているが詳細は不明である。本研究では、培養腎上皮細胞を用いてアルブミンの取り込み特性を解析し、基質間相互作用やメガリンの発現等について考察を加えた。 培養腎上皮細胞として、ブタ腎由来のLLC-PK1細胞、フクロネズミ腎由来のOK細胞を、基質としてFITCで蛍光標識した牛血清アルブミンを用いた。LLC-PK1細胞によるアルブミンの取り込みは、37℃では時間依存的に増加したが、4℃では極めて小さく時間依存的な取り込みも観察されなかった。アルブミンの取り込みは、基質濃度の上昇にともなって飽和性を示し、また代謝阻害剤DNPで細胞を処理することにより著しく低下した。しかし、その取り込みはカチオン性のゲンタマイシンやアプロチニンの共存によっては変化しなかった。また、ある種の細胞でメガリン発現を誘導することが知られているretinoic acid/debutyryl cAMP処理によっても、大きな変化は見られなかった。同様の検討を一部OK細胞でも行ったが、LLC-PK1細胞と類似した結果であった。従ってこれら培養細胞では、メガリンが発現していないかあるいはアニオン性物質とカチオン性物質でメガリン中の結合サイトが異なる、アルブミンのエンドサイトーシスにはメガリンとは異なるシステムも関与する、等の可能性が示唆された。
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