研究概要 |
強毒株のmahoney(MMM)をポリオウイルス受容体(PVR)遺伝子トランスジェニックマウス(Tg21)に静脈接種したところ末梢組織では増殖しなかったが、大脳、小脳、脳幹、脊髄で顕著に増殖した。[^<35>S]-methionine標識したMMMとワクチン株Sabin 1(SSS)をTg21と正常マウスに接種後の組織対血漿濃度比Kp,appは良好な相関が得られたことから、PVRはポリオウイルス(PV)の感染初期の組織分布性の支配要因とはならないことが示唆された。特に、MMM,SSS両株は大脳、小脳への分布は最も小さく脳選択的感染性は初期分布過程の臓器選択性で説明できなかった。SSSの血液脳関門透過速度は0.22ml/min/g brainとなり、大脳と同様に小脳や脳幹、脊髄への移行も同程度の速度が得られた。興味深いことにMMM型のcapsid遺伝子とSSS型のnon-capsid遺伝子を持つrecombinant型のPV(MSM)についても同様の透過速度が得られた。静脈から脳内へ移行した[^<35>S]量は脳内の増殖可能なウイルス量と一致したことから、血液脳関門を末変化型で透過することが示唆された。さらに、大脳にMMMとSSSをTg21に接種した時、MMMは顕著な増殖性を示し、SSSはほとんど増殖性を示さなかった。さらに、腎臓に直接MMMを接種したところnon-Tgでは速やかに減少したが、Tg21では僅かな増殖性が見られた。以上の結果から、ポリオウイルスの脳選択的感染性は脳選択的な高い増殖性が主な原因であり、ポリオウイルス受容体が介在した分布性は脳選択的感染性と関係が低いことが示唆された。
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