細胞レベルで薬物の膜透過に及ぼす膜表面電位の影響を明らかにする目的で、細胞外メディウム中のイオン強度を変えることにより、膜表面電位を変化させ、イオン型薬物のCaco-2細胞(ヒト大腸癌細胞由来)内への薬物の取込への影響を検討した。メディウム中のイオン強度増大に伴い、カチオン型薬物の細胞内への取込は減少し、アニオン型薬物の取込は逆に増大した。また、培養カップに単層培養した細胞を介した透過速度もイオン強度変化に伴って変化した。さらに透過速度と膜表面電位の変化度との関係をみたとろこ、薬物の取込量の増減と膜表面電位の変化度との間には良好な相関が認められ、薬物の消化管吸収性に膜表面電位が影響を及ぼすことが示唆された。本実験結果は関係学会(日本薬学会等)において発表するとともに、学術雑誌に投稿する予定である。 今後は、膜表面電位とともに静電的相互作用の大きな因子であると考えられる細胞内負の膜電位が薬物吸収に及ぼす影響を明らかにする予定である。
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