結晶としての規則性と液体としての流動性を合せ持つ液晶の高い異方性・配向性を使って、多岐にわたる有機反応を高度に制御し、酵素類に匹敵する高選択的高効率反応場(系)の構築を行い、新しいコンセプトに基づく反応制御系の確立とその要因解明を目的とした。今回、特に、従来成果の乏しい熱多分子反応に焦点を絞り研究を展開した。 その結果、リン酸エステルのトリフルオロメタンスルホン酸によるオレフィンの脱離反応(2分子反応)では、トルエンなどの等方性相中ではほとんど認められなかった高い位置選択性が、スメクチック液晶やネマチック液晶中では明らかに認められた。 また、水酸基の反転反応として汎用性の高い光延反応(4分子反応)では、等方性溶媒(ベンゼン)中では完全に反転した生成物が得られたのに対し、スメクチック液晶中では立体保持の生成物が高選択的に得られるという、興味深い知見が得られた。 いずれの反応系も、規則性高い分子配列を持つ液晶独特の構造に起因しているものと思われる。 本研究による萌芽的成果により、本分野の更なる展開が期待できるようになった。
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