研究概要 |
「研究目的」 シスタチンS、はパパイン等のシスティンプロテアーゼに対する阻害活性を持つ。植物由来のパパインをラットの口腔内に投与すると、このタンパクが誘導される。この事象は外来(食物、細菌)プロテアーゼによる障害(炎症)に対する防御機構の一つであると考えている。一方、歯周病の原因細菌の一種であるP.Gingivalis 381Pを選択的かつ殺菌的な抗菌活性を示すことを見い出した。続いて、この細菌の一連の変異株(381,W50,W83,VPI14018,ATCC 33277,NCTC1 1834)に幅広く作用することを確認した。しかし、高度に精製された標品中の微量成分が抗菌活性の本体である可能性を否定できない。シスタチンSまたは微量成分が歯周病の治療薬となりうる可能性を追求すること。 「研究実施計画」 1、 各精製段階で、総ての画分の抗菌活性を詳細に検討。交感神経β-受容体作動薬であるイソプロテレノールで処理したラット顎下腺唾液をSephadex G-75カラムによるゲルクロマトグラフィーで画分G-I,G-IIおよびG-IIIに分画した。更に、シスタチンSが溶出するG-IIは、CM-パパインアガロースによるアフィニテイークロマトグラフィーよって精製した。精製したシスタチンS以外に低分子量ペプチドが溶出するG-IIIに抗菌活性が認められた。一方、シスタチンSのアミノ酸配列データに基づいて、抗原となり得るペプチドを2種類合成し、抗体を作成した。精製したシスタチンS溶液に抗体を添加して、シスタチンSを除去して得た検体には、抗菌活性が認められなかった。 G-IIIをSDS-電気泳動法で分析した結果、多数のバンドが検出された。現在、どの成分が抗菌活性を示すのか、また活性成分とシスタチンSとの関連性について検討中である。 2、 活性ペプチドの合成と評価。シスタチンSのアミノ酸配列情報等の成績を参考にして、2種類のペプチド断片を作成し、抗菌活性を検討している。
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